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賃金の支払方法





賃金支払いの5原則

 賃金は、労働者にとって重要な生活の糧であり、確実にその支払いがなされなければ生きていくことができません。そこで、労働基準法では賃金の支払いについて5つの原則を定めています。「賃金支払いの5原則」と言われるもので、その内容は以下の通りです。

    1 通貨払いの原則
     労働に対する報酬を支払う場合は、通貨で支払わなくてはなりません。ただし例外もあります。これについては次項に記載します。

    2 直接払いの原則
     賃金を労働者以外の者に支払うことは禁止されています。労働者の親(親権者)や法定代理人、また労働者の委任を受けた代理人に対しても支払うことはできません。ただし、「使者」(例えば、本人が病気のため配偶者が賃金を受取りに来たような場合)に支払うことは認められます。仮に労働者から会社に第三者(債権者等)に支払うように申し入れがあったとしても、本人に直接支給しなければいけません。
     最近では、賃金を銀行振込にするケースが大半ですが、この場合は、賃金を本人の銀行口座等に振り込むことにより支払えば、直接払いの原則には違反しないことになっています。

    3 全額払いの原則
     賃金の一部を控除して支払うことは禁止されますが、次の場合は、賃金の一部を控除することが認められています。
    (1) 所得税などの源泉徴収や社会保険料の控除など法令に定めがある場合
    (2) 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定(一般に24協定と言われるもの)がある場合
     このほかに全額払いの原則の例外として、裁判所から賃金を差し押さえられた場合があります。ただし、差押さえできるのは賃金(税・社会保険料控除後の手取額)の4分の1とされていますので、会社は労働者に賃金の4分の3を、債権者に4分の1(ただし、標準的な世帯所得を超える場合は、政令で定める額)を支払うことになります。

    4 毎月最低1回払いの原則
     賃金は、1ヶ月の間に少なくとも1回は支払わなくてはなりません。
     賃金の締切日は必ずしも月の末日でなくてもよく、また支払期限についてもその月中に支払う必要はなく、締切後計算に必要な期間をおいて支払ってもかまいません。基本給はその月に支払い、割増賃金等は翌月払いという方法を取ることも可能です。

    5 一定期日払いの原則
     毎月25日払いとか、毎月月末払いとか一定期日に支払うことをいいます。  毎月第3月曜日に支払うとか、毎月20日から月末までの間に支払うというように、支払日が変動する場合や支払日が特定できないことは許されません。ただし支払日が休日に当たる場合に、支払日を繰り下げることや、繰り上げることはかまいません。
     一定期日払い及び毎月最低1回払いの例外としては、賞与や見舞金・退職金などの臨時に支払われる賃金があります。



通貨払いの原則の例外

s  賃金は通貨で支払うのが原則ですが、次のような例外があります。

    1 賃金の口座振込
     労働者の同意を得た場合は、 (ア) 労働者が指定する銀行その他の金融機関の預金または貯金への振込
    (イ) 労働者が指定する証券会社の預かり金(証券総合口座)への振込ができます。(ただし、証券会社の預かり金への振込については労基法施行規則7条の2により制限があります)
     また、賃金の口座振込を行うためには次のような手続が必要です。
    (1) 個々の労働者の書面による申出または同意を必要とします。
    (2) 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定の締結が必要となります。
    (3) 使用者は、口座振込の対象となっている個々の労働者に対し賃金を支払う都度、賃金の支払いに関する計算書を交付しなければなりません。
    (4) 賃金は賃金支払日の午前10時までに、口座払出しができるようになっていることが必要です。

    2 労働協約に別段の定めがあるとき
     労働協約に定めがある場合は、小切手、住宅供与、通勤定期券等の通貨以外の方法で賃金の全部又は一部を支払うことができます。この場合の労働協約は労働組合と締結する協約を指し、労働者の過半数代表者との協定は入りません。したがって、労働組合のない事業場ではこの取扱いはできません。また労働協約でその評価額を定めておかなければなりません。

    3 小切手による退職金の支払い
     退職金については労働者の同意があれば、小切手や郵便為替で支払うことができます。



最低賃金について

 使用者は最低額以上の金額を賃金として労働者に支払わなければなりません。この最低賃金は「最低賃金法」により定められ、パートタイマーやアルバイトなどの雇用形態や国籍に関係なく全ての労働者に適用されます。最低賃金は、地域別最低賃金と産業別最低賃金があり、地域別最低賃金は各都道府県毎に決定されます。産業別最低賃金は、都道府県を対象として特定の産業について決定されるものと、全国を対象として特定の産業について決定されるものの2種類があります。

 最低賃金には、次の賃金を含むことはできません。
    (1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
    (2) 1ヶ月を超える期間毎に支払われる賃金(賞与など)
    (3) 時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金など)
    (4) 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

 最低賃金の例外として、次の労働者に対しては使用者が所轄労働基準監督署の許可を受けた場合は、3年を限度として最低賃金の適用を除外することが認められています。
    (1) 精神または身体の障害により著しく労働能力の低位な者
    (2) 試みの使用期間中の者
    (3) 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定の者
    (4) 所定労働時間の特に短い者、軽易な業務に従事する者、断続的労働に従事する者

 また、産業別最低賃金についても適用除外がありますが、都道府県により適用が異なりますので詳しくは所轄の労働局、労働基準監督署でお尋ねください。
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年俸制賃金を1年分をまとめて支払うことは可能か

 労働基準法が適用される労働者であれば、年俸制の場合でも、一括払いは毎月1回以上・定期日払いの原則から違法となり、月々に定期に分割して支払うことになります。



年俸制の場合の割増賃金

 労働基準法第37条で、時間外・休日・深夜の割増賃金の規定が設けられていますが、年俸制を採っている場合は割増賃金の支給はどうなるのでしょうか。もちろん、労働基準法第41条の管理・監督者であれば年俸制に限らず、深夜業を除き、労働時間・休憩・休日は適用除外となり割増賃金の問題は生じません。ただし、最近では年俸制も役員や管理・監督者のみならず一般社員にまで広がって来ています。年俸制を採用している一般社員の場合の割増賃金はどうなるのでしょうか。
 この場合は、やはり時間外・休日・深夜労働に対しては割増賃金の支給は必要になります。また、年俸制であっても賃金の支払は月毎に定期に分割して支払う必要がありますから、割増賃金分についても、年俸として定めた賃金額とは別に計算し、月毎に支給する必要があります。
 ただし、あらかじめ年俸額の中に割増賃金相当額を含めて年俸額を決定することはできます。この場合の注意点は以下の通りです。
    (1) 就業規則等に年俸額に割増賃金が含まれている旨が定められ、さらに給与明細等に割増賃金相当額が明確になっていること。
    (2) 各月毎の割増賃金相当額が、実際の割増賃金相当額を上回っていること
    が必要です。したがって、ある月において業務繁忙のために、決められた割増賃金相当額を上回った場合は、割増賃金の不足分を支払わなくてはなりません。
 年俸制を採用しているからといって労働時間管理を正確に把握していないと、労働基準監督署から賃金不払いとして是正勧告されるケースもあります。労働者であれば、年俸制を採用していても出勤簿やタイムカードなどで勤怠管理を行なうことは当然ですが、さらに時間外労働についても超勤命令簿や超勤整理簿などで労働時間管理をしっかり行なわなければなりません。



割増賃金の計算から除外される手当

 労働者に時間外および深夜労働を行わせた場合には2割5分以上の、また休日労働を行わせた場合には3割5分以上の割増賃金を支払わなくてはなりません。この場合の計算式は以下の通りです。

    【1時間あたりの賃金×時間外・深夜労働・休日労働を行わせた時間数×割増率】

 この計算にあたっては、(ア)家族手当、(イ)通勤手当、(ウ)別居手当、(エ)住宅手当、(オ)子女教育手当、(カ)臨時に支払われる賃金、(キ)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しなくても構いません。

(エ)の「住宅手当」については次のようなルールがあります。
 住宅手当であれば全て該当する訳ではなく、住宅ローンや賃貸住宅の家賃に対して一定割合を支給するなど、実質的に住宅に要する費用に応じて算定され支給される「住宅手当」に限られます。したがって、一律に定額で支給される「住宅手当」は割増賃金の計算から除外される賃金には含まれません。
 例えば、持家居住者に対しては住宅ローン月額の一定割合を支給し、賃貸住宅居住者に対しては家賃の一定割合を支給するなどがそうです。したがって、持家居住者には○万円、賃貸居住者には○万円というように支給する方法や、全員に一律○万円を支給するというように一律に支給する方法は、割増賃金の計算から除外される住宅手当には該当しませんので注意してください。
 同様に家族手当についても、家族数に関係なく一律に支払われるものは家族手当でないとされますので注意してください。

 一般に手当は基本給と違い、手当ごとに定められた支給要件に該当する従業員に対して支給しますので、これらの手当を厚くする反面、基本給を抑えれば割増賃金等の抑制につながります。こういった方法を取っている企業も実際に多いようです。
 また上記の手当は法律で義務付けられているものではないので、支給しなかったからといって違反となるものでもありません。しかし、現在支給している手当の見直しを行う場合は労働条件の不利益変更にあたる場合もありますので注意が必要です。




割増賃金等の基礎となる算定基礎額の算出方法

 コンピュータで給与計算ソフトを使用しているような場合では、割増賃金についても基礎データを入力すれば自動的に行なってくれます。そうでない場合、日給や時間給の場合は、1時間あたりの賃金額の計算は容易ですが、月給制の場合は以下のように計算します。

    <月給制の場合>
    1 1ヶ月平均所定労働時間を算出する
     例えば、所定労働時間が8時間で、1年間の所定休日が、土曜・日曜日が100日、祝祭日・国民の休日が15日、年末年始4日、夏季休暇3日とすると、
    <1ヶ月平均所定労働時間=((365−(100+15+4+3))×8)÷12 (端数切捨て)>
    (1年間とは1月から12月をいい、就業規則で4月から翌年3月までというように定めることもできます。)
    (注) 毎日の所定労働時間が一定でない場合は、以下の計算式によります。
    <1ヶ月平均所定労働時間=1年間の総労働時間を算出し、12で割る>

    2 算定基礎額(通常の1時間あたりの賃金額)を算出する
    算定基礎額=月額給与の合計額÷1ヶ月平均所定労働時間 (端数は四捨五入)

    3 上記の算定基礎額に、時間外労働の場合は1.25、休日労働の場合は1.35を掛け、端数は四捨五入して割増賃金額を算出します。



時間外労働手当の定額支給

 労働者に時間外労働を行わせた場合には、労働基準法第37条により、使用者は2割5分以上の割増賃金を支払わなくてはなりません。
 この割増賃金を個々に計算し支払うのでなく、1ヶ月毎に一定の額を営業手当や業務手当等として支払うことは可能です。ただし、その金額が日々計算した時間外労働手当の額を下回らない限り可能ということですから、仮に上回った場合は、個々の従業員についてその差額を追加して支払わなければならなりません。

 この定額化した手当等が、現実に時間外労働手当として支給しているかどうかが不明確になっている場合が時折見受けられますので、就業規則、賃金規程や労働契約書などに明文化しておく必要があります。例えば、営業手当として時間外労働手当の定額支給をしていたところ、次第にその性格が曖昧になってきて、労働基準監督署から割増賃金不払いとして是正指導されたようなケースもありますのでご注意ください。
 就業規則や賃金規程には、例えば「時間外労働手当については、あらかじめ月毎に定額で支給することがある。この場合、当該月の実際の時間外労働の額が、定額で支給した額を超えたときは、その差額を支給する。」等を規定し、労働契約書や賃金改定通知書、給与明細書などに、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分を個々に明確に区分し明示しておくことが大切です。

 また、部門毎に業務の繁閑の差があるのが通常ですから、不公平感を解消するためにも、全社的に一律に定額支給するのではなく、部門毎に実態に合った時間外労働手当を定額支給することも大切です。時間外労働手当の定額支給は、賃金計算が容易というメリットがありますが、働く側にとっては個々人の残業の多少に係わらず一定額が支給される、極論を言えば働らく人も働かない人も一定額が支給されるため不公平感が生じ、モチベーションが低下するという危険性もありますので、この辺を留意して運用することが望まれます。



割増賃金の不払い時の裁判所による付加金支払命令

 労働基準法第114条には、「付加金」の規定があります。これは、使用者が次の賃金や手当を支払わない場合に、労働者の請求により、使用者が支払わなければならない未払い金の他に、これと同額の付加金の支払いを、裁判所が使用者に命じることができるというものです。
    (1) 解雇予告手当
    (2) 休業手当
    (3) 割増賃金
    (4) 年次有給休暇の賃金

 労働基準法では、賃金等を使用者が支払わない場合には刑事罰が課せられるとしていますが、これとは別に、上記の4つの手当や賃金については、さらに裁判所が付加金の支払いを命じることができると定めています。この請求は違反のあったときから2年以内にしなければなりません。ただし、労働者が裁判所に請求したからといって、裁判所は必ず付加金の支払いを命じる訳ではありません。通常は、裁判所が相当に悪質と判断した場合に限られるようです。
 付加金の支払い義務は、(ア)労働者の請求、(イ)裁判所が支払命令をする、ことにより発生しますから、仮に裁判所が命令を発する前に使用者が割増賃金等を支払ってしまえば、労働者は裁判所にこの請求はできません。このことから、労働者が裁判所に付加金の請求をすることを察知した使用者が、先に割増賃金等を労働者に支払ってしまうことにより、使用者の付加金支払いの負荷は消滅するともいえます。

 割増賃金等の不払いの場合、労働者はまず労働基準監督署に相談に行くケースが多いと思われますが、いずれにせよ、割増賃金を含め賃金の不払いは労働基準法違反となりますので、事業主の方は十分ご注意ください。



賃金を支払う際の端数処理

 賃金を計算する場合の端数処理についても行政通達があり、次のような場合は賃金全額払の原則に違反しないとされます。

1 割増賃金を計算する際の端数処理
(1) 1ヶ月の時間外労働、休日労働、深夜業の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる。(ただし、例えば毎日20分の残業を行った場合、これを日々30分未満として切り捨てることはできません。この場合は20分×1ヶ月分の日数を時間外労働時間として計算し、これに端数が生じた場合に端数処理が行えるということです。)
(2) 1時間あたりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り上げ、50銭以上を1円に切り上げる。
(3) 1ヶ月の時間外労働、休日労働、深夜業の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り上げ、50銭以上を1円に切り上げる。

2 1ヶ月の賃金支払額の端数処理
(1) 1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合は、50円未満の端数を切り下げ、50円以上を100円に切り上げて支払う。
(2) 1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払う。



平均賃金について

 労働基準法では、第20条の解雇予告手当や第26条の休業手当等については、労働基準法第12条に規定する「平均賃金」を支給しなければならないと定められています。それでは、この「平均賃金」の算定方法はどうすればよいのでしょう。

 平均賃金の算定方法の原則は、
『算定事由発生日前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金の総額÷3ヶ月間の総日数』で求めます。
 なお賃金締切日がある場合の3ヶ月間は、直前の賃金締切日から起算した期間となります。

 ただし、この期間中に次のような期間がある場合には、その期間中の日数と賃金は除外して計算しなければなりません。
    (1) 業務上の災害による休業期間
    (2) 産前産後の休業期間
    (3) 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
    (4) 育児・介護休業期間
    (5) 試用期間(ただし、試用期間中に算定事由が発生した場合は、その期間の日数及び賃金をもとに平均賃金を算定できます。)

 また、パートタイマー等の場合で「賃金が、労働した日若しくは時間によって計算され、又は出来高払制その他請負制で定められた場合」などの場合は、(ア)原則で計算された額か、(イ)「賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60の額」のいずれか高い方の額とされていますので、原則的な平均賃金の算定方法よりも平均賃金額が高くなる場合があります。
 例えば、1日8時間労働で時給800円(日額6,400円)のパートの場合、直前の3ヶ月の総日数が92日で、うち勤務日数が30日であった場合、
    (1) (6,400円×30日)÷92日≒2,087円(原則)
    (2) (6,400円×30日)÷30日×60/100=3,840円となり、原則で計算された平均賃金額より高くなります。



法定内超勤の残業手当

 労働基準法では、法定労働時間を1日8時間、1週40時間と定めています。1日の労働時間が7時間で週35時間と定めた事業所の場合は、1日1時間は法定労働時間を下回っているといえます。この法定内の1時間に対して、時間外労働を命じた場合を「法内超勤」といいます。
 時間外労働を行った場合は2割5分以上の割増賃金を支払わなくてはなりませんが、法内超勤であればこの割増賃金の支払は必要ありません。ただし、1日の労働時間は7時間ですから、賃金はこの7時間の労働に対して支払われていますので、法定労働時間の8時間に達するまでの1時間について残業をさせた場合は、原則として通常の労働時間の1時間分の賃金(100分の100)は支払わなくてはなりませんので注意してください。
 また、営業時間等の関係で、ある部署の従業員のみ毎日1時間の残業が必要なような場合は、実務上は手当として支給する方法でもかまいません。この場合の手当額ですが、通常の賃金額程度若しくはそれ以上であれば問題ないと思います。

 また同様に労働基準法では、1週間に1回(若しくは4週間に4回)の休日を与えなければならないとしており、これを法定休日といいます。法定休日に休日労働を行った場合は、3割5分以上の割増賃金を支払わなくてはなりません。
 法定休日以外の休日(通常、土曜日の休日や国民の祝日など)を法定外休日といいます。法定外休日に休日労働を命じても休日労働の問題は発生しません。ただし時間外労働の場合と同じ考え方で、通常の1日分の賃金は支払わなくてはなりません。

 時間外労働および休日労働が、法内超勤および法定外休日労働の範囲を超えないのであれば、36協定の締結および届出の必要もありません。



管理職の時間外手当

 労働基準法第41条2項では、管理・監督者は労働時間・休憩・休日の規定の適用除外としています。したがって、管理・監督者については時間外労働手当・休日勤務手当の支給も必要ありません。

 管理・監督者とはいかなる者をいうのかでしょうか。実際のところ明文化された規定はなく、全て行政通達などの解釈例規によっています。それによると、
    (1) 局長、部長、工場長など労働条件の決定、その他経営方針の決定に参画し、経営者と一体的な立場にあり、特に労務管理上の指揮監督権を有し、一般従業員を事業主に代わって使用するものであること。労務管理への参画とは、具体的に昇進・昇格・昇給を含めた人事管理権を有する者、労働条件を直接決定できる者で、数系統を統括できる職務権限を有していること。
    (2) 自己の勤務について自己裁量の権限を有し、出社・退社について就業規則上または実態の上でも、厳格な制限を受けない者であること。管理・監督者は労働基準法上の労働時間・休憩・休日についての保護が外れるので、自己の裁量によって自己の労働時間を管理できる権限を有し、その結果が勤怠評価の対象とされず、不利益な取扱いを受けない者であること。
    (3) その地位について何らかの特別給与が支給されていること。その金額も、責任の度合いを裏打ちするにふさわしい額であること。賞与等の支給率や算定基礎賃金についても、一般従業員に比べて優遇措置がとられていることなど。

 上記のように、管理・監督者の範囲は案外広くはありません。そして、会社として位置付けている管理職イコール労基法上の管理・監督者という訳でもありません。したがって資格や名称ではなく、上記のように職務内容、責任と権限、勤務態様により判断することになります。
 このように白黒とハッキリした基準がないため、実際面でも課長以上を管理・監督者としている会社もあれば、部長以上を管理・監督者としている会社もあり、その態様は会社によりまちまちです。ただし、管理・監督者の数は多くても1割程度と言われていますから、例えば全従業員の半分に役職を与えて、管理・監督者として時間外労働手当・休日勤務手当の支給をしないという例などは如何なものかと思います。
 事業所で現在、管理・監督者と位置付けている労働者が実態として管理・監督者の要件を備えていれば、時間外労働手当・休日勤務手当を支給する必要はありませんが、上記の要件と比して判断してみましょう。

 なお管理・監督者でも年次有給休暇および深夜労働の規定は適用除外になりませんので、深夜労働を行った場合は2割5分以上の割増賃金を支給しなければならず、また請求があった場合は年休も付与しなければなりません。



管理・監督者の深夜労働に対する割増賃金

 労働基準法第37条では、「使用者は労働者が午後10時から午前5時までの深夜労働をした場合は、2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなくてはならない」として、労働者が深夜労働をした場合の割増賃金の支給を規定しています。

 一方、労働基準法第41条2項で、管理・監督者は労働時間・休憩・休日の規定の適用除外としており、管理・監督者については時間外労働手当・休日勤務手当の支給は必要なしとしています。ただし、深夜業については適用除外としていませんので、管理・監督者といえども深夜労働を行った場合は、2割5分以上の割増賃金の支給が必要となります。



翌日にまたがった残業

 1日の労働時間が午前9時から午後6時まで(途中1時間の休憩時間あり)の事業場で、翌日の午前1時まで残業した場合、0時以降の労働は翌日の労働とせず、あくまで前日の労働の延長とされます。したがってこの場合は、午後6時から翌日の午前1時までの7時間の時間外労働手当(100分の125)と、午後10時から午前1時までの3時間の深夜労働手当(100分の25)の支給が必要となります。

 また、仮にその残業が翌日の始業時刻まで及んだ場合でも、その始業時刻までの時間外労働手当を支給すれば足りるとされます。このことについては行政通達でも「翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、法第37条の割増賃金を支払えば、法第37条の違反にはならない」としています。
 それでは、翌日にわたって残業した場合で、翌日が法定休日の場合はどうでしょうか。残業が翌日にまたがっても前日の労働の延長とされますから、休日労働としての割増賃金は必要ないのでしょうか。この場合は、翌日の0時以降については100分の135以上の休日労働手当が必要です。また、併せて午前5時までは深夜労働手当も必要となります。



遅刻や早退の賃金控除

 労働者が遅刻・早退した場合には、ノーワーク・ノーペイの原則から、あるいは職場秩序の維持という点からも、その時分についての賃金控除を行う必要があります。ただし、完全月給制の場合は、就業規則等に不就労時等の賃金控除の定めがあることが前提となります。

 賃金控除の方法ですが、遅刻時間と早退時間を分単位で把握する必要があります。月給制の場合、1か月分を集計後、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは可能です。しかし、日々の計算において、例えば30分の遅刻を1時間に切り上げて賃金控除することは違法とされますので、ご注意下さい。
 この点については行政通達でも、「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労務の提供のなかった限度を超えるカットについて、賃金の全額払いの原則に反し違法である。しかし、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法第91条の制限内で行う場合には、全額払いの原則には反しないものである」としています。

 したがって、就業規則の定めに従い制裁として減給を行う場合は、実際に遅刻・早退をした時分を上まる賃金控除を行うことは可能ですが、そうでない場合は、遅刻・早退をした現実の時分により賃金控除を行うことになります。



遅刻した時間の残業時間との相殺

 労働基準法第32条では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」としています。これが法定労働時間といわれるものですが、変形労働時間制を採用している場合を除き、1日の労働が8時間を超えない限り割増賃金の支払いは必要ありません。

 遅刻時間と残業時間の相殺ですが、例えば1時間の遅刻に対して1時間の残業を命じることは、1日8時間の法定労働時間の枠を超えていませんので可能です。ただし、仮に1時間の遅刻に対して2時間の残業を命じた場合は、1時間の割増賃金(125%)を支払いが必要となります。

 これに対して、例えば1日8時間労働の会社で、従業員が1日全部を欠勤した場合、この欠勤した8時間を、同一週内の他の日との残業と相殺できるかという問題があります。1週40時間が法定労働時間ですから、他に日に振替えても40時間以内なら可能のような気がしますが、この場合は認められませんのでご注意ください。
 例えば、1日(8時間)の欠勤に対して、同一週内の他の日に4時間ずつ2日に分けて残業を命じた場合の処理は以下のようになります。
    (ア) まず、「4時間×2日=8時間」分の割増賃金(125%)を支払う。
    (イ) 欠勤した日については、会社の規定等により8時間分の賃金を控除する。
    (ウ) 「(ア)の8時間分の割増賃金(125%)」−「(イ)の控除した8時間分の賃金(100%)」=差引き25%の割増賃金の支給
 ただし、法定休日でない休日に上記の8時間を労働させた場合でも週40時間以内であれば割増賃金の対象としなくてもかまいません。



女性に対する家族手当

 家族手当を男性労働者に限って支払い、女性労働者には支給しないという事業場を見かけることがあります。これは問題です。労働基準法にも男女雇用機会均等法にも違反します。家族手当も賃金ですから、差別的取扱いをすることはできません。
 就業規則に「家族手当は無収入の妻に支給する」などとなっていれば直ちに手直しをしなければなりませんし、また慣行で、妻のみにしか支給していないのであれば是正する必要があります。



通勤手当を定期乗車券で現物支給

 通勤手当を定期乗車券で現物支給しようとするには、労働組合と労働協約を締結する場合のみ可能となります。したがって、労働組合のない場合は通勤手当を定期乗車券で現物支給することはできません。ただし、定期乗車券相当額を通貨で支給することは特に問題ないと思います。
 なお、半年分の定期乗車券相当額を通貨でまとめて支給している例がありますが、この場合では、例えば4月から9月までの定期乗車券相当額を4月の給料支給日に支給するなど、前払いする方法を取れば問題ありません。なお通勤手当は税制上、通勤手当の額が1ヶ月10万円を超えなければ非課税となります。



出産時等における給料を前借

 労働基準法第25条は「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」と定めています。これを「非常時払い」といいます。したがって上記の事由により労働者が請求した場合は、使用者は、すでに働いた分の賃金(将来働くであろう賃金は含まれません)については日割り計算で支払わなければなりません。
 なお、「その他厚生労働省令で定める非常の場合」とは、結婚、死亡、やむを得ない事由による1週間以上の帰郷をいいます。
 また、この非常時払を請求できる者は労働者だけでなく、労働者の収入により生計を維持している者も含みます。労働者の収入により生計を維持している者とは、必ずしも親族である必要はなく、同居人でも可能とされています。



退職時の賃金の支払い時期

 労働基準法第23条は、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」としています。
 したがって、例えば会社で退職者の賃金は次の賃金支払日に支給することになっていても、労働者が請求した場合は、請求があった日から7日以内(暦日をいいます。)に賃金を支払う必要があります。ただし、「請求があった場合においては」ですから、労働者の請求がなければ、所定の賃金支払日に支給することは可能です。また、労働者が死亡した場合の権利者とは、配偶者等の相続人を指しますので、相続人以外の者が請求しても支払う必要はありません。
 退職金はどうでしょう。
 退職金については、就業規則等で支払期日が定めてあれば、その支払期日に支給することは差し支えありません。ただし、就業規則等で支払期日を定めてなければ、請求があった日から7日以内に退職金を支給しなければなりません。



解雇予告手当と貸付金の相殺

 労働基準法第17条では、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前借の債権と賃金とを相殺してはならない。」と規定しています。
 しかし、労働基準法第20条に規定している解雇予告手当は賃金ではありません。賃金でなければ、貸付金等との相殺は可能と考えることもできますが、それはできないとされています。行政通達でも、「予告手当の支払は、単にその限度で予告義務を免除するに止まるものである。したがって、法理上相殺の問題は生じない。」としています。



賞与の支給

 行政通達によると、「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め予定されていないもの」とされています。したがって、賞与は必ず支給しなければならないものではなく、また賞与を支給しないからといって、法律に触れるものでもありません。

 我が国においては、一般的に多くの事業所で夏期と年末において、ボーナスや一時金などとして賞与を支給しています。このように賞与を支給することとする場合は、就業規則に賞与に関する事項を明らかにする必要があります。そして、就業規則で賞与を支払う旨を定めれば、支給内容等はその定めによることとなります。
 また行政通達では、「定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさない」としています。このように、賞与とは金額や支給条件があらかじめ確定していないものをいいますので、従業員の勤務成績や会社の業績などによって左右するのが本来の姿です。
 一般に就業規則には、「会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給期間を延長し、又は支給しないことがある。賞与の額は、会社の業績及び従業員の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。」などと規定します。例えば、「賞与は、毎年7月と12月の年2回支給する。」と限定規定しますと、業績悪化でも必ず支給しなければならなくなりますので、注意が必要です。
 賞与支給日の数日前に辞めた者に対して賞与の支払いをする必要があるかどうかという問題もあります。
 通常の場合、支払う必要はありません。ただし、賞与に算定期間を設けてこの期間に勤務した者に対しては、退職後であっても賞与を支払う旨の就業規則や慣行等があった場合は、支払う必要があります。
 したがって、トラブルを起こさないためにも、就業規則には「賞与は、原則として毎年○月○日及び○月○日に在籍する労働者に対して支給する。」や「賞与は、上期は7月中、下期は12月中に支給する。支給日は、その都度決定する。ただし、支給日に在籍しない者及び算定対象期間の全部について欠勤したもの(休職を含む)については支給しない。」など、賞与は在籍日支給である旨を明記すべきです。



賃金、退職金の時効

 労働基準法第115条は、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」として、それぞれの請求権の時効を定めています。
 なお、賃金請求権の時効は2年間ですが、この請求権は賃金支払期ごとに発生します。仮に、労働基準監督署などに賃金不払いの申告をしたとしても、2年より前の賃金支払期以前の賃金請求権については時効により消滅してしまいますので、請求はできません。
 退職手当請求権の時効は5年です。

 また、上記条文中の「その他の請求権」とは、以下のものをいいます。
    1. 休業手当請求権(同法第26条)
    2. 年次有給休暇請求権(同法第39条)
    3. 年次有給休暇の賃金請求権(同法第39条)
    4. 帰郷旅費請求権(同法第64条)
    5. 金品返還請求権(同法第23条)のうち金銭返還請求権